事例紹介

ハイブリッド銅ボンディングの Nano-CT

Darius Rückert

Darius Rückert

- 最終更新日: 2026年8月6日

最先端の X 線ハードウェアと Voxray の高度な逐次再構成ソフトウェアを組み合わせ、半導体ハイブリッドボンディングの 3D データをかつてない高品質で取得しました。このセットアップでは解像度 239.8 nm、コントラスト対ノイズ比 (CNR) 15.81 を達成し、サブミクロンのボイドや剥離の可能性を明らかにするとともに、スキャン時間を最大 50% 短縮しました。

ハイブリッド銅ボンディングは、先端半導体デバイスにおける従来のバンプ接合のスケーリングと性能の限界を克服する新しい接合技術です。数百ナノメートルまでの微細なピッチで銅と銅を直接接合できるため、電気的性能が向上し消費電力が下がります。これは 3D IC アーキテクチャや広帯域メモリにとって競争上の優位性となります。

こうしたアーキテクチャがますます複雑になり接合ピッチが縮小するにつれ、製造性と長期信頼性を確保するための高度な検査手法が不可欠になっています。3D X 線ナノコンピュータ断層撮影 (Nano-CT) は非破壊で構造を評価できる非常に有用な手法ですが、現在のシステムでは十分な解像度を得ることが難しく、欠陥の特定に必要な画質を犠牲にせずにスキャンパラメータを速度向けに最適化することも困難です。

こうした制約を克服するため、独自に構築したラボ用 Nano-CT システムを使用しました。図 1 に示すように、このシステムは 2 つの重要な高性能ハードウェアを活用しています。

Excillum NanoTube N3:この先進的な X 線源は、非常に安定した微小な X 線スポットを提供します。これは幾何学的拡大率を最大化して高解像度を得るために不可欠です。

DECTRIS EIGER2 X CdTe 1M-W:このフォトンカウンティング検出器は、エネルギーしきい値機能により一般的な検出器の読み出しノイズを排除します。テルル化カドミウムセンサーの高い効率と組み合わせることで、ラボ用 Nano-CT のようなフォトン数が限られるイメージングに最適です。

NanoTube N3 線源と EIGER2 検出器による X 線 Nano-CT セットアップ

図 1:Excillum NanoTube N3 X 線源と DECTRIS EIGER2 X CdTe 1M-W フォトンカウンティング検出器で構成される X 線 Nano-CT セットアップ。挿入図は線源の近くに取り付けたサンプルを示しています(出典:論文、図 1)。

この事例では、テストサンプルとして AMD Ryzen 7 5800X3D プロセッサを選びました。この市販デバイスはハイブリッドボンディングで CPU コアと V-Cache を接続しており、内部のボンディングパッドは直径 3 µm、ピッチ 9 µm で配置されています。Nano-CT セットアップで最大の幾何学的拡大率を得るには X 線源のすぐ近くで 360° 回転させる必要があるため、サンプルサイズを大幅に小さくする必要がありました。図 2 のように、まずドレメルで大まかに加工し、続いて精密レーザー切断によって目的の領域を含むサブミリメートルの柱状サンプルを切り出しました。

Nano-CT 用 AMD Ryzen 7 5800X3D のサンプル作製

図 2:サンプル作製の工程。ドレメルによる最初の切り出しの後、レーザー切断により X 線源の近くで 360° 回転できるサブミリメートルのサンプルを作製しました(出典:プレゼンテーション、8 ページ)。

本研究では、解像度と取得効率を評価するために 3 つの異なるスキャン戦略を用いました。

  • 最初のベースラインスキャンでは、60 kV で 550 nm の X 線スポットと 5 keV の検出器エネルギーしきい値を使用し、4.44 時間で 1600 枚の投影を取得しました。
  • 2 回目の高解像度スキャンでは幾何学的拡大率を最適化し、80 kV でより小さな 400 nm のスポットを使用した結果、スキャン時間を 2.5 時間に短縮できました。
  • 最後に、DECTRIS フォトンカウンティング検出器の効率を示すため、160 kV に上げ、検出器に 5~25 keV の正確なエネルギーウィンドウを設定して 3 回目のスキャンを行いました。

このエネルギーウィンドウにより、画像のコントラストに寄与しない高エネルギーフォトンを除外できたため、線源をより高い出力で動作させることができました。この戦略によって、サンプルを透過してカウントされるフォトン数は平均 2078 から 4126 カウントへとほぼ倍増しました。有効なフォトンカウント数を同じに保ったまま、スキャン時間を 50% 短縮できる可能性が示されました。

取得した投影は、Voxray の Quantum Reconstruction Technique (QRT) で再構成しました。QRT は多色 X 線スペクトルを考慮してランベルト・ベールの式を解く逐次再構成法です。さらに、サンプルのドリフトや限られたフォトン束に対処するため、ジオメトリの精密化と全変動 (TV) ノイズ除去も適用します。

ボンディング構造と各層の検査

得られた 3D データにより、再配線層、銅ピラー、ハイブリッドボンディング界面など、部品の内部構造を詳細に可視化できます。再配線層では、幅約 200 nm、ピッチ 600 nm で配置された配線が明瞭に解像されました。

再配線層とボンディング界面を通る水平 CT スライス
ハイブリッドボンディング構造を通る垂直 CT スライス

図 3:再構成した CT スライス。上:垂直断面上に位置を示した、2 つの再配線層とボンディング界面を通る水平スライス。下:ハイブリッドボンディング構造を通る垂直スライス。

これらの構造を検査すると、ボンディングパッド全体にわたるサブミクロンのボイドや密度のばらつきに加え、金属構造の損傷の可能性を示す局所的に暗い領域が見つかります。垂直スライスからは、銅ピラーやボンディングパッドのわずかな位置ずれも確認できます。

ボンディングパッド内のサブミクロンのボイドを示す高解像度 QRT スライス
密度のばらつきを示すボンディングパッドの垂直 QRT スライス

図 4:ハイブリッドボンディング界面を通る高解像度 QRT スライス。上:サブミクロンのボイドがあるボンディングパッド。下:パッド全体の密度のばらつきを示す垂直スライス。

計測と定量解析

QRT は目視検査だけでなく、スキャンした構造と背景の間に明確なグレー値の分離をもたらします。このコントラストにより、計測のための自動 3D しきい値セグメンテーションが容易になります。セグメント化したボリュームに収まる最大の球を当てはめることで肉厚メッシュを算出し、構造の寸法を測定しました。

直径ヒストグラム付きのハイブリッドボンドの肉厚メッシュ

図 5:セグメント化したハイブリッドボンドと銅ピラーの 3D レンダリング(構造の厚みで色分け)と、定量的な寸法解析のためのヒストグラム。

銅ピラーを除外するためにアスペクト比が 2 を超えるオブジェクトを除き、32 個のボンディングパッドを個別に解析しました。抽出した 3D メッシュに基づく最大フェレ径の測定から、パッド直径の加重平均は 3.02 µm、標準偏差は 61.70 nm となりました。

再構成手法の比較:QRT と FDK

標準的な Feldkamp-Davis-Kress (FDK) 法は処理時間が短く、約 15 秒に加えてジッター補正に 5~10 分しかかかりません。一方、逐次再構成の QRT 法は約 3 時間かかりますが、画質の定量的な改善をもたらします。

ノイズ除去なしの標準的な FDK 再構成
FDK
Voxray の逐次 QRT 再構成
QRT

図 6:ノイズ除去なしの標準的な FDK 再構成(左)と Voxray の逐次 QRT 再構成(右)の画質の視覚的比較。

最適化したスキャンの定量比較では、QRT 再構成のコントラスト対ノイズ比 (CNR) は 15.81 で、FDK 再構成の 7.66 を上回りました。構造と背景のグレー値の差も QRT のほうが大きく、比率は FDK の 1.7 に対して 13.2 でした。信号対ノイズ比 (SNR) はどちらの再構成もほぼ同等で、QRT が 12.34 dB、FDK が 12.68 dB でした。

線広がり関数による FDK と QRT の解像度比較

図 7:鋭いエッジを横切るラインプロファイルから求めた線広がり関数 (LSF) で測定した、再構成ボリュームの解像度。

再構成スライスの物理的な解像度は線広がり関数 (LSF) で測定しました。FDK 再構成の解像度は 303.0 nm でした。QRT は反復処理中に連続的なジオメトリ補正を行うことで、239.8 nm の解像度を達成しました。この値は、400 nm の X 線源スポットサイズから決まる理論上の解像度限界 200 nm に迫るものです。

ハイブリッドボンディングの接合がさらに微細化するにつれ、X 線検査技術も先端半導体パッケージの要求に応えるために進化しなければなりません。本研究は、フォトンカウンティング検出器と QRT のような高度な逐次再構成を組み合わせた高解像度 X 線 Nano-CT によって、サブミクロンのボイド、構造のずれ、剥離の可能性を特定できる高品質な 3D データが得られることを示しています。この物理シミュレーションに基づくアプローチは、AI ベースのフィルタリングに伴う不確実性なしに、定量計測のための信頼性の高いデータセットを提供します。Nano-CT には、厳しいサンプルサイズの要件や、標準的な FDK と比べて長い再構成時間という制約がありますが、故障解析やプロセス最適化において最も正確な 3D ボリュームデータと最高の解像度を得るためのベンチマークであることに変わりはありません。

この記事は、2026 IEEE 76th Electronic Components and Technology Conference (ECTC) で発表された論文「3D Analysis of Hybrid Copper Bonding through X-ray Photon-Counting Nano-CT Imaging」の研究とデータに基づいています。

https://ieeexplore.ieee.org/document/11561225

著者:
Till Dreier (Excillum AB)
Darius Rückert (Voxray GmbH)
Spyridon Gkoumas (DECTRIS Ltd.)
Julius Hållstedt (Excillum AB)

この事例で紹介した知見と高解像度データは、緊密な協力によって実現しました。NanoTube N3 X 線源を提供いただいた Excillum AB と、EIGER2 X CdTe 1M-W フォトンカウンティング検出器を提供いただいた DECTRIS Ltd. に深く感謝いたします。いずれもこのイメージング結果を得るうえで欠かせないものでした。

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